平成28年12月2日 キヤノン、ロケット事業に参入 宇宙産業 商機広がる

平成28年12月2日 キヤノン、ロケット事業に参入 宇宙産業 商機広がる

2016年12月02日(金)2:48 PM

キヤノンは宇宙ロケット事業に参入する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が手掛けるミニロケットの開発に参画。精密機器で蓄積したノウハウを生かし、機体の制御システムを供給する。1日にはエイチ・アイ・エスとANAホールディングスが宇宙船開発ベンチャーに出資すると発表。国が主導する分野に民間企業が相次ぎ乗り出すことで、遅れていた日本の宇宙産業が活性化しそうだ。ミニロケットは打ち上げ費用が主力ロケットの10分の1以下で、衛星写真の撮影や通信に使う超小型衛星を運ぶ手段として活用が期待される。JAXAが進めているのは直径52センチメートル、全長10メートル弱と電柱並みで、衛星を打ち上げる機体としては世界最小。来年初めに鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から発射する。

 

キヤノン子会社のキヤノン電子は開発チームに技術者を送り込んだ。デジタルカメラなどの設計・生産手法を応用し、最適な調達部品の選択や制御機器の軽量化を推進。3段ロケットを宇宙空間で切り離したり、機体の向きを変えたりするシステムを構築した。燃料噴射装置など本体部分はIHI子会社のIHIエアロスペースが担当する。従来の人工衛星は気象や防衛に使い、国が発注した大型タイプが多かった。今後は災害の把握や農業向けの地表観察などの用途で民間の小型タイプの打ち上げが増え、これに適した低コストロケットの需要も伸びる見通し。キヤノン電子は来年人工衛星を打ち上げる計画があり、あわせて宇宙事業強化につなげる。

 

HISとANAHDは宇宙船ベンチャーのPDエアロスペース(名古屋市)と資本提携した。
HISが3千万円、ANAHDが2040万円を出資し、エンジンなどの開発を後押しする。2023年の商業運航を目指しており、実現すればHISが宇宙旅行や輸送サービスを展開、ANAHDは機体整備やパイロットの訓練などを支援する。海外では宇宙産業で民間移転が進んでいるが、日本は政府やJAXAが主導。3000億円とされる宇宙機器産業の売上高の約9割を官需が占めている。ただ、国内でも民間企業が進出し始めた。東大発ベンチャーのアクセルスペースは安価な超小型衛星を開発。元ライブドア社長の堀江貴文氏が設立したインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は17年1月にも民間単独で国内初のロケット打ち上げを計画している。政府も環境整備を急いでおり、11月には民間企業による宇宙開発ルールを定めた「宇宙活動法」が成立した。宇宙産業の育成に向けて官と民が一斉に動き始めている。



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