平成30年3月13日 崩れる新卒採用ルール

平成30年3月13日 崩れる新卒採用ルール

2018年03月13日(火)3:00 PM

経団連は12日の会長・副会長会議で、2021年春入社の学生を対象とした就職活動ルールの見直しに着手した。会員企業は6月の採用面接解禁、10月内定の段取りで動いているが前倒しやルール緩和を検討する。生産性向上や人口減への対応に追われる企業の採用活動の自由度を高める狙い。新卒一括採用後に終身で雇用する日本の慣行は変革を迫られている。

 

「時代はどんどん変わる。一定時期に採用をするやり方にはいろんな意見がある」。榊原定征会長は12日の記者会見でルール見直しの必要性に言及した。今年秋をめどに結論を出すとした。

 

経団連は(1)採用面接と説明会の解禁を3月に一本化(2)ルールを「一つの目安」と緩める(3)採用面接を6月から4月に前倒し(4)ルールの廃止――という4つの案を軸に検討を進める。政府や大学側との調整も急ぐ。

 

就活日程は目まぐるしく変化してきた。政府が就活で学生が授業に出られないとして後ろ倒しを要請すると、16年卒は採用面接の解禁を4月から8月にずらした。だが、就活の長期化が問題になり、17年卒は6月前倒しに。こうした度重なる制度変更には批判も強い。

 

経団連には新卒一括採用が現状に合わなくなったとの問題意識がある。リクルートキャリア(東京・千代田)によると、18年卒の学生のうち、採用面接の解禁日にあたる6月1日時点で内定を得たのは61.9%。前年同期に比べ約10ポイント上がり、採用活動を前倒しする実態が浮き彫りとなった。人口減もあって、企業の間では優秀な人材の争奪戦が加速している。

 

人材研究所の曽和利光社長は「新卒に限った採用ルールは時代に合わない」と指摘する。企業は既卒の学生や外国人にもターゲットを広げ、採用活動を実施している。企業の競争は国内市場だけでなくなり、グローバルに活躍できる人材が欠かせない。ある大手IT(情報技術)企業では採用の半分を外国人が占め、通年採用が定着しているという。

 

今後は人工知能(AI)の活用で人が担う仕事は減るとみられ、学生にも専門性の高いスキルが求められる。企業が学生の厳選採用にカジを切るとの見方もある。新卒採用する学生を一から育てるのでなく、入社時から一定の専門性を求めるようになる可能性がある。「専門性の高い人材は新卒や既卒、時期に関係なく確保したい」(大手メーカー首脳)というのが企業側の本音だ。

 

経団連の検討は企業の動きを追認することになるが、完全な自由競争になって過度に人材を奪い合う事態は避けたい考えだ。榊原会長は「(採用活動を)やりたい放題やるのも問題だ」とルール自体の廃止には慎重。政府内や教育関係者の間では「学業に悪影響が出ないようにしてほしい」との要望も多い。

 

日本総合研究所の山田久・主席研究員は「雇用の流動性が高まるにつれて採用方式も多様になるのが自然だ」と話す。働き手の中には、企業に使い捨てにされたり、雇用機会を得にくくなったりするとの危惧もある。企業に入りやすくし、ひとつの会社を辞めても次の仕事を見つけやすくする。社会人への学び直し支援や中途採用の拡大を浸透させることも経団連の課題になりそうだ。



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