平成31年4月16日 旅館の泊食分離 再考 外国人増加、人手不足など環境変化

平成31年4月16日 旅館の泊食分離 再考 外国人増加、人手不足など環境変化

2019年04月16日(火)2:44 PM

旅館において宿泊と食事を別立てにする泊食分離。すでに素泊まりや朝食のみのプランを販売する旅館は少なくない。旅館個々の経営や地域の実情、旅行動向に応じて取り組まれているが、外国人旅行者の増加、旅館の人手不足など、泊食分離を取り巻く環境も大きく変化。11日に東京都内で開かれた観光庁の「宿泊施設の地域連携推進事業」の報告会でもさまざまな意見が出た。


観光庁の事業では、旅館の連携を通じた泊食分離がテーマの一つで、各モデル地域が実証事業を実施した。事業の主な狙いはそれぞれで川湯温泉・屈斜路温泉(北海道弟子屈町)は連泊客の獲得、昼神温泉(長野県阿智村)は若年層などの宿泊促進、飯坂温泉(福島市)はインバウンド誘客。有志の旅館が参画し、食事の選択肢を広げ、ニーズへの対応を模索した。


湯田中温泉(長野県山ノ内町)の場合は事情が異なる。地獄谷野猿公苑のスノーモンキーが人気となり、欧米を中心とする外国人の個人客、連泊客の急増にせまられる形で、すでに泊食分離が進んでいる。その結果、旅館では宿泊客の夕食需要が地域の飲食店に流れ、稼働率は上昇しても単価が伸びない状況も見られるようになった。


モデル事業に参加した湯田中温泉、清風荘の大関松男氏は「泊食分離で地域は潤っても、旅館は売り上げが上がってこない。大きな旅館ではピーク期でも板場が暇な時があると聞く」。しかし、旅館の事情は多様で、大関氏は「当館のような家族経営の旅館では人手不足で夕食を出すのが大変になっている。連泊客などはよそで食べてもらう方がありがたいという場合もある」と説明した。


こうした課題を踏まえて湯田中温泉ではモデル事業の中で、旅館の夕食プラン単品を旅行サイトで展開し、素泊まりなどの外国人客に販売したほか、飲食店との差別化に向けて高付加価値な食事を富裕層などにアピールする試みを始めた。ベジタリアン、グルテンフリーなどへの対応も食の高付加価値化の一環と捉えて推進した。


旅館は、地域経済に中核的な役割を果たす一方で全国的な施設数は減少している。廃業や外部資本の買収による業態転換なども相次ぐ。泊食分離にはメリット、デメリットがあるが、宿泊ニーズの変化、多様化に対応しなくてはならない。


泊食分離を考える条件は、地域ごとに異なり、環境は常に変化しているが、旅館の連携を通じて課題を解決していくしかない。



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