平成28年5月31日 短時間の残業代「手厚く」 ディスコ、長時間是正へ割増率上げ
半導体製造装置メーカーのディスコは時間外労働(残業)の割増賃金について、月60時間までの場合、残業が短い方が割増率が高くなるように制度を改定した。
残業を減らす社員のインセンティブを高め、長時間労働を自発的に改めるよう促す。割増率の逆転について同社は「同様の事例はないのではないか」と見ている。
4月の勤務分から残業が月45時間までの割増率を25%から35%に引き上げ、45時間を超え60時間までの30%より高くした。60時間を超す分は従来通り50%とする。労働基準法は時間外労働に対し、基準内賃金に一定の割合をかけた割増賃金を払うよう義務づけている。原則25%以上で、月60時間を超すと50%以上と規定している。会社側が命じるのが前提だが、実際には残業するかどうかを社員の判断に委ねる会社も多い。残業するほど時間給が増える割増賃金は長時間労働を助長しかねない。
ディスコは割増率を逆転させることで月45時間を超える残業をしている社員の時短につながる効果を期待している。当面の人件費は年間で約2億円上昇する見込み。「他の施策と併せて残業を減らせば吸収できる」とみている。45時間を超える残業に対する割増率は従来と変わらず、実際に残業削減につながるかは検証が必要だ。同社では昨年度、月60時間超の残業をした社員が19%、45~60時間も16%だった。半導体製造装置事業は繁閑の差が大きく、技術者の残業が多くなりがちだという。
国会では労働時間でなく成果に対して賃金を払う「脱時間給制度」を盛り込んだ労基法改正案が昨年4月の提出以来棚ざらしになっている。ディスコの試みは働き方と賃金を巡る議論に一石を投じることになりそうだ。
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