平成31年1月7日 19年海外旅行者、訪日客数最多見通し
今年、空前の旅行ブームが訪れる見通しとなり、観光業界が大きな期待を寄せている。2019年はゴールデンウイークが10連休となるほか、秋には日本でラグビーワールドカップが開かれ、日本人の海外旅行者数、訪日客数ともに史上最多を記録するとみられている。豪華観光列車によるツアーなど高額旅行商品の売れ行きも好調で、日本経済にも追い風となりそうだ。
HISでは昨年10月から欧州などへの航空券やホテルの予約が入り始め、11月の中旬には長距離路線がほぼ埋まった。国内外をめぐるクルーズ船も人気で、同業JTBではGW出発分13本がほぼ売り切れた。
今年の大型連休はGW(4月27日~5月6日)だけではない。19年12月からの年末年始も9連休となる。9月20日~11月2日に開催されるラグビーW杯も大きな商機で、試合会場周辺ではラグビーファンをターゲットにした誘客活動が進む。格安航空会社(LCC)の国際便がある地方空港の所在県では訪日客宿泊数が伸びている。
JTBがまとめた今年の旅行動向によると、日本人の海外旅行人数(出国者数)1910万人、訪日客数3550万人と、いずれも過去最高の見通しだ。
国内旅行ではニーズの多様化に伴う二極化が起き、高額商品も人気を集めている。JR東日本の豪華観光列車「トランスイート四季島」は最低料金一人32万円でも7~9月出発分の応募倍率は3.9倍だ。阪急阪神ホールディングス傘下の阪急交通社が今月4日に発売した、乗客定員18人の豪華バスツアーも一人98万円と高額だが、「ゆったり旅行したい人には支持される」と見込む。
国内を席巻する訪日客の行き先も多様化している。訪日客向け国内旅行「サンライズツアー」を展開するJTBでは、中国からの訪日客が多い2月の春節休暇中に北海道の流氷ツアーが人気。4月の桜の季節の予約人数は前年同期比15%増と、“コト消費”が目立つ。
昨年の訪日客数は自然災害の影響を受けながらも史上初めて3000万人を突破。東京五輪・パラリンピックが開かれる20年に4000万人という政府目標に向けて弾みがついた。
ただ、専門家によると、旅行ブームには死角もある。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「10連休は戦後初の大型長期休暇。非正規雇用の収入減の影響が後から出て、消費が落ちる可能性もある」と指摘する。
また訪日客が増えても、訪日客消費額が政府目標「20年に8兆円」を達成できるかは不透明だ。17年の実績は4兆4162億円で、政府は単価の高い欧米豪からの誘客を図るが、世界的に伸びているのは東アジア・太平洋地域からの観光客。「地の利を生かし、アジアの人々にリピーターになってもらう方が現実的」(宮前氏)ともみられている。
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